硫酸塩添加仕込の実施例
無機塩類を用いた清酒もろみのアミノ酸度低減方法について、カリウム、マグネシウム及びリンの添加が有効であることが示されているが、酵母の活発な増殖を伴い発酵が旺盛になるため、発酵経過が大きく変化し製成酒の酒質が大きく変化するといった課題も示されている。
これまで清酒醸造であまり注目されなかった無機塩類である硫酸塩についてもろみへの添加発酵試験を実施した結果、硫酸塩の添加によりもろみのアミノ酸度が大幅に低減するとともに、アミノ酸度以外の成分や発酵経過は変化しないという知見が得られた。
以上のことから、硫酸塩添加によって、発酵経過、有機酸生成及び香気エステル生成を変えずにアミノ酸度のみを効果的に低減できるとともに、アミノ酸度低減の程度を硫酸塩の添加量によって適切に調節できることから、本法がもろみのアミノ酸度調節の手段として非常に有効であることが示された。
(仕込例)
原料米には精米歩合60%の山田錦を使用した。酵母はきょうかい701号酵母を使用した。酒母は普通速醸酒母を使用した。仕込規模は総米20kgとした。
硫酸塩は硫酸カルシウムを使用し、汲水の総量に対して2mM又は4mMとなるよう、添の汲水に全量を添加した。
具体的な添加量は、例えば総米1tの仕込の場合、添の汲水約135Lに370g(又は740g)となる。
硫酸カルシウムは中性付近では溶解性が低いが、水麹に添加すれば比較的容易に溶解する。
発酵経過は以下に図示するとおりとなった。
なお、本研究の詳細につきましては、第46回独立行政法人酒類総合研究所講演会における発表をご参照ください。